那須温泉郷

那須温泉郷(なすおんせんきょう)は、栃木県那須郡(旧国下野国那須町にある那須岳(活火山)の周辺に点在する温泉の総称(温泉郷)で、日光国立公園内に位置する(一部離れた温泉は那須塩原市にある)。

西暦630年に開湯した歴史ある温泉地で、俳人松尾芭蕉殺生石を訪れた頃から塩原温泉郷と並んで那須地域の顔となっている。

江戸時代後期の「諸国温泉功能鑑」と呼ばれる温泉番付では、東日本の温泉において最高位の「大関草津温泉に次ぐ「関脇」の位の効能を持つ温泉として全国に紹介されていた。

現在は温泉街の手前付近に皇室が静養に訪れる那須御用邸があることで有名。 湯本温泉以外は小さな温泉で、広々とした那須岳斜面のあちこちに点在している。


郷内の温泉

鹿の湯の源泉発見後、次々と温泉が発見され、那須湯本温泉大丸温泉弁天温泉北温泉、八幡温泉、高雄温泉三斗小屋温泉の7つが那須七湯として古くから知られている。 それぞれの温泉で効能・泉質が異なるため、湯めぐりが楽しめる。ここではこれに板室温泉を加えて紹介する。

那須湯本温泉

九尾の狐伝説で有名な殺生石近くにある温泉街。那須温泉郷で最も古く、温泉神社を中心に温泉街を形成している。

旧来の那須湯本温泉街より少し下った位置に点在するホテルなどは「新那須温泉」と分けて呼称することもある。

泉質:硫化水素泉 酸性明礬泉 等

温泉街:那須温泉郷のシンボル的共同浴場「鹿の湯」がある。

歴史:開湯伝説によれば、鹿が温泉で傷を癒しているところを発見したとされ、共同浴場の名前にその由来が残る。

江戸時代は黒羽藩が管理し、また松尾芭蕉奥の細道の途中で那須湯本温泉に宿泊している。

1858年に温泉街を流れる湯川左岸が氾濫して温泉街が壊滅し、現在の右岸高台側に移転した。



大丸温泉

泉質:単純泉

那須ロープウェイ山麓駅の少し下に、数件の宿がある。 小川をせき止めた露天風呂「川の湯」がある。明治時代の軍人乃木希典夫妻が良く訪れた宿がある。 那須御用邸に注ぐ湯の元湯はこの付近に湧いているとされる。


弁天温泉

大丸温泉と湯本温泉の間にある1軒宿。湯量も豊富。

泉質:単純泉


北温泉

湯量も豊富で、プールのように大きな露天風呂がある。

泉質:単純泉 弱食塩泉 鉄泉

温泉地:余笹川の谷合深くひっそりと建っている一軒宿である。建物傍まで車では行くことができず、バス停から徒歩30分、県営の無料駐車場からも5分程深い谷と絶景を見ながら歩くことになる。

木造3階建ての建物は江戸時代、明治時代、昭和の建物が渾然と一体となってレトロな雰囲気を醸し出している。

歴史:江戸時代から続く湯治場である。


八幡温泉

毎年5月中旬〜6月上旬にかけ、20万本ものツツジ群生の眺望ができる温泉。

泉質:単純泉



高雄温泉

かつては廃業した旅館跡地に無料で入れる野湯が存在した。現在は別経営者によるホテルが営業しており野湯は消滅してしまったが、代わりに内湯等が整備され日帰り入浴ができるようになっている。

泉質:硫酸塩硫化水素



三斗小屋温泉

那須ロープウェイ山頂駅から茶臼山を越えた向こう側にあり、歩きでしかたどり着けない。他の温泉からは離れた那須塩原市の山奥の飛び地にあり、旅館2軒。

泉質:単純泉



板室温泉

他の温泉と少し離れた那珂川沿いにある温泉で、那須塩原市(旧黒磯市)にある。古くから湯治場として知られ、1971年(昭和46年)3月23日に国民保養温泉地に指定されている。

泉質:単純泉



交通アクセス

鉄道の場合は東北新幹線那須塩原駅、またはその隣駅のJR東北本線黒磯駅が最寄駅となる。黒磯駅からは路線バスの便が多くある。黒磯駅発より本数は限られるが那須塩原駅からも路線バスは出ている(時刻表)。那須温泉旅館協同組合の加盟旅館に宿泊した場合は、那須塩原駅より無料の送迎バス「りんどう号」を利用することもできる。高速バスは、新宿駅新南口から那須リゾートエクスプレス号が殺生石手前の那須温泉神社付近まで運行している(時刻表)。車以外の観光客の周辺観光地へのアクセスを良くするため、「キュービー号」というシャトルバスが、那須湯本温泉街と、その麓に点在する南ケ丘牧場や美術館群、道の駅那須高原友愛の森といった那須高原を巡回運行している。自動車の場合は東北自動車道那須インターチェンジで下り、栃木県道17号那須高原線(通称「那須街道」)で北上して向かうのが一般的。渋滞時には新設された黒磯板室インターチェンジ那須高原サービスエリアのETC出入口などを利用して迂回する方法もある。



歴史

温泉郷で最も古い歴史を有するのは那須湯本温泉で、西暦630年には既に温泉神社が創建されたとされ、738年の正倉院文書にも「那須湯」という記述で登場している。それを示すように2010年、那須温泉神社では「開湯1380年」を示すのぼりが立っていた。

江戸時代は「那須七湯」と呼ばれた。温泉郷と呼ばれるようになったのは、戦前の鉄道省が出版した「温泉案内」にて那須温泉郷と紹介されてからである。


周辺のみどころ

まず那須温泉神社と殺生石。深い歴史があり神社の境内や階段は独特の雰囲気が漂う。両者は散策道でつながっている。そこから旧有料道路(現在は無料開放)に向かってバスか車で登ればつつじ吊橋(渓谷にかかる歩行者用つり橋)と八幡のつつじ群落。さらに登ると近年できた那須高原恋人の聖地展望台、大丸温泉を過ぎれば那須ロープウェイと茶臼岳。那須岳の斜面はツツジの名所。特に湯本温泉から大丸温泉の間(弁天温泉周辺)は、初夏には一面真っ赤に染まるほどに咲き誇る。ツツジの群落の中に遊歩道があり、歩きながらゆっくり花を堪能できる。北温泉のから30分ほど旭岳側へ登った登山道沿いには白い花の咲くヤシオツツジの群落がある。ツツジと言えば普通樹高2〜3mの灌木だが、ここのヤシオツツジは幹の直径10cm以上樹高5m以上の大木が多い。